闇のリフレイン

【01〜10】




「リフレイン」

指先が熱くなる
繰り返し弾いて来たフレーズに心凍える
胸の奥に留めた君の記憶は
重ね合わせた磨り硝子の中
心違えた人形の
底無き悲しみを知る者はない
闇のリフレイン
君を「永遠」と呼ぶ僕は
死に至る病に罹患している


「兎の眼」

赤いライトだけが灯っていた
片側だけ付いた信号のように
ただ 君だけを見つめていた
この手の覆いをそっと外してごらん
君が青いライトを灯さないなら
僕の目は 赤い点滅を繰り返すだろう
同じ夢を見るために……
兎は君を欲している


「二つの心臓」

地下室へ続く階段を
僕はゆっくりと降りて行った
そこに君がいたから
小さく蹲っていたから
僕の小鳥はすっかり怯えてしまったんだ
怖がらせてごめんね
僕は翼を愛撫する
重ねた唇の先で
二つの心臓が 激しく震えていた


「ハーフムーン」

陸の裏側で君は眠り
海の裏側で僕は目覚める
いつも半周遅れている
右回りで
君は物語を書き
左回りで
僕は君を奏でている
二人合わせてみれば真昼
瞬きすれば夜明け
そして 夜
僕らは並んで 一つの星を見上げた


「雨だれ」

屋根に伝って落ちる度
結晶は凍てついて
僕の魂柱を狂わせた
夢を見ようと僕は言った
夢を見たのと君は言った
這い出た声は遠過ぎて
僕は暗い湖の底で首を擡げていたけど
君の目から滴る優しい雨に抱かれて
僕も 君の肩を存分に濡らした


「束縛」

死んだのはどっち?
歪んでしまったのはどっち?
右手が君を求めてる
だけど 左手は冷たいんだ
君を絞め殺してしまうかもしれないから
僕は左手を封印した
僕は僕を絞め殺してしまうかもしれないから
君は僕の手首を縛っておくれ


「観覧車」

僕達は同じ一つのゴンドラの中
見える景色は違っても
話す言葉が違っても
流れる風は同じゴンドラの中
光は この指の先に灯る
心はそよ風に吹かれ 僅かに揺れる
地上に降りる瞬間まで
君を抱き締めていよう
風にさらわれないように


「シルエット」

背中にはいつも
朽ちた過去がしがみついてる
悲しいね
そして 滑稽だね
歪んだ人形のシルエットが踊る
夜明け前に
君の指にキスすれば
しがらみを断ち切って
僕は人間になれるかもしれない


「コール」

一度だけ電話したんだ
その時 僕は死にかけていた
君の声が聞きたくて
会いたくて
だけど 僕達の愛は隔てられていた
運命の歯車を逆回転させて
君を捕まえたかった
ただ一度のコール
君は僕の名前を呼んでくれたから
命をあげる


「終わらない夢」

目を塞いでも
君が見える
耳を塞いでいても
君の声は聞こえる
たとえ 声を失ったとしても
君に愛を囁き続ける
愛してる 愛してる 愛してる
この宇宙が何度巡っても
原子に還ったとしても
この夢は終わらせない